韮山にある歴史文化施設「江川邸」(伊豆の国韮山 TEL、055-940-2200)で4月12日、「江川邸パンフェスタ」が開催される。
同地は江戸時代に伊豆国・駿河国・相模国・武蔵国を直轄していた代官・韮山家の邸宅があり、築年数は400年以上。現在は国指定重要文化財として一般に公開している。
同家でもとりわけ傑出した人物として有名なのが、36代当主の江川英龍(通称=太郎左衛門、号=坦庵)。英龍は、農地の改良や種痘の接種などを積極的に行うなど、領民に「世直し坦庵」と呼ばれ、現在も地元民に親しまれている。
英龍は幕末の海防について強い問題意識を持っていて、西洋流砲術などを積極的に導入。韮山では砲台を作るために反射炉を製造し、品川沖(現在のお台場)に大砲台を作ったことでも知られる。同時期に兵糧としてパンの製造を始めた英龍は、日本人で初めてパンを作った代官として「パン祖」とも呼ばれている。
英龍没後160周年として、英龍がパンを作ったとされている「パンの日」にちなんで初開催する同イベント。会場では、伊豆半島を中心としたパンの販売のほか、各種イベントなども行う予定。
当日は10時30分から英龍が当時制作したレシピを元にしたパンの再現し、製作するイベントを開く。イベントは実際にパンが作られていた土間で行われ、塩・小麦粉・水のみで作られたタネを鉄鍋で焼きあげる。焼き上げは10分程度で完成し、当日は予約をした参加者に試食をふるまう。
同施設学芸員の橋本敬之さんは「レシピは3年前の8月に発見されたもので、3種類のレシピがある。焼き上がりの食感はナンのようなモチモチしたもの」と話す。
パン焼き体験は予約制だが、当日枠も用意している。体験はパン焼きの体験だけでなく、普段は一般公開されていない英龍が描いたとされる書画をはじめとした資料、江川邸の内庭公開や地場産品のランチボックスの提供などを行う。
橋本さんは「当時の施設でパンを焼くのは初の出来事。多くの人に来てもらいたいが、とりわけ地元の人に関心を持ってもらい、韮山がパンの発祥地ということを知ってもらえれば」と話す。
イベントは10時~16時30分。イベント参加費は2,500円(入場料込み)、入場料は大人=500円、小中学生=300円。