ところてんの製造・販売を行う栗原商店(駿東郡清水町伏見)に8月10日、竹で作られた電気自動車「竹トラッカー」が到着した。
創業122年の虎斑竹専門メーカー「竹虎 山岸竹材店」(高知県)4代目社長の山岸義浩さんはよると、同車両は、高知県須崎市の一地域にしか自生しないという「虎斑竹(とらふだけ)を使って作った物で、自動車のベースは光岡自動車の「Like-T3」。
竹を使った場所は、ボディーやハンドル、座席など。長さ約4メートルの竹を50本使ったという。車体は竹細工の技法である「ヤタラ編み」、「網代(あじろ)編み」などを採用し、接着剤などは一切使っていないという。
山岸さんは「日本で多く使われている竹と異なり、トラのような独特の竹を使った。日本でも須崎の本当の一部でしか使われていない。その竹をアピールするために考案した」と話す。山岸さんは自ら竹トラッカーに乗り、横浜市までの道のり約1000キロ走破を目指している。
同車両は「日本の竹の魅力を内外に知ってほしい」と、山岸さんが昨年考案。自動車の製作費用350万円は、クラウドファンディングを使ったという。今回の走行目的は、横浜市に住む最高額支援者が体験した「虎竹の里体験ツアー」で製作した竹細工を「配達」するのが目的。山岸さんは「宅配便だったら1日で届くものを、わざわざ車で行くのが面白い」と笑顔を見せる。
山岸さんによると、竹トラッカーの連続走行距離は約50キロ。出発は毎朝3時ごろで、1日の移動距離は約100キロ。当初は930キロを10日間かけて須崎から横浜まで行く予定だったが、「1000キロ近くなる予定。この車では高速道路に入れないので一般道を走っているが、大型の車が通り越していくのに恐怖を感じた」とも。
9日間の「配達の旅」について、山岸さんは「珍しい形でインパクトがあるのか、停車中に多くの人に関心を持ってもらい、話しかけてもらった。多くの人がこの虎斑竹の魅力を知ってもらえるきっかけになった。また時速50キロのスピードにも耐えられる竹の耐久性に、あらためて安心した」と話す。
自動車は配達を終えた後、虎斑竹の竹林見学ツアーに使う予定という。今後について、山岸さんは「国内はもちろん、海外でも虎斑竹の魅力を伝え続けたい。願うなら、この自動車でパリのサンジェルマン大通りを走ってみたい」と夢を話す。