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三島のダイカスト企業が「スチームパンク」に挑戦 端材生かし新たな活路へ

ダイカスト製の特注看板を持つ三宅社長と「全て社員たちの手作り」という衣装を着る青木さん

ダイカスト製の特注看板を持つ三宅社長と「全て社員たちの手作り」という衣装を着る青木さん

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 ダイカスト製品の製造・販売を手掛ける「三光ダイカスト工業所」(三島市松本)が10月8~10日、東京で開催されるスチームパンクイベント「STEAMPARK(スチームパーク)」に初出展する。

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 同社は1964(昭和39)年創業の金型鋳造(=ダイカスト)企業。主に自動車や医療機器に使われるパーツをメインに製造している。

 同社によると、自動車部品の生産拠点は近年、国外へシフトするケースが多くなり、一時期は30億円あった年間売り上げも現在は売り上げが落ち込み、次なる一手を模索しているという。

 2014年に3代目社長に就任した三宅ゆかりさんは「営業職といえば、受注先の相談対応がメインで、自身から発注を取りに行ったり、企画を考えたりするメンバーはいなかった。いい意味で職人肌の従業員が多く、変化やチャレンジする風土からは遠かった」と話す。

 ゆかりさんは創業者・武司さんの長女で、それまで美容やエステ業界に身を置いていたが、父のダイカストに対する情熱や会社経営に対する思いを継承するために社長就任を決意したという。「ダイカストの詳しいことは知らず、いつも社員に教えてもらってばかり」とゆかりさん。

 今回、同社が出展する「スチームパンク」は、サイエンス・フィクションのサブジャンルの一つとして、1980年代から欧米を中心に流行し始めた概念という。蒸気機関が発達した架空の歴史感をベースに、古い歴史と精密な機械が融合する世界観が特徴。日本では明治・大正期のファッションや世界観と融合する例もあり、国内外に多くの愛好家を持つ。

 スチームパンクイベント出展のきっかけについて、三宅社長は「ダイカストを製造する課程で不要になった端材などを整理整頓する意味で何かしら新しい活用方法を考えていた。端材を使ったアクセサリーやグッズを考えていたところ、偶然スチームパンクの存在を見つけ、新しいことにチャレンジしたい気持ちが湧き上がった」と話す。

 同社は今年春ごろに、三宅社長と30代を中心とした若手社員らを集め、「ダイカスト男子」と命名。プロジェクトを立ち上げた。メンバーの一人である青木義和さんは「最初はスチームパンクの存在すら知らなかった。このような世界があることに驚いた」と話す。

 チームでは、端材などを有効活用した男性向けアクセサリーなどの開発を目指してリサーチを始めた。三宅社長は「医療機器などに使う小ロット部品の製造や、オーダーメード部品などの経験もあった。アクサリーや看板など、需要に応えるだけの技術は十分にあった。どの企業も進出していない、ブルーオーシャンを目指す」と意気込む。

 一方、創業から半世紀近くダイカスト専門で行ってきた企業からは、反発の声もあったという。「変化や挑戦に積極的でない社員もいて、企画も座礁しかけたが、プロジェクトメンバーたちとの話し合いを通じ、次第に理解を深めていくことで社内の協力者も増えた。夏休み返上で若い社員のためにスチームパンクの衣装を作ってくれたベテラン社員もいるなど、次第に会社の雰囲気が変わってきた」と三宅社長。

 現在社内ではイベントに向けて新開発の商品製作に多忙をきわめているという。青木さんは「以前は自身の部署内での交流しかなかったが、この企画をはじめてから世代や部署を越えた交流ができ、お互いスチームパンクが共通の会話になってきている。社内の風通しがよくなった」とも。

 「今後はスチームパンクに関わるクリエーターたちと協力し、さまざまなアイテムを提案していきたい。ダイカストの魅力を国内だけでなく、世界にも伝えていきたい」と意欲を見せる。

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