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伊豆のワサビが世界農業遺産に認定 加工業者「未来につながるきっかけ」にチャンス

採取したてのワサビを持つ山城社長

採取したてのワサビを持つ山城社長

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 国連食糧農業機関(FAO)は3月9日、「静岡水ワサビの伝統栽培」を世界農業遺産に認定した。

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 世界農業遺産とは、社会や環境に適応しながら長年継承されてきた、独自性かつ伝統的な農林水産業を認定する制度。2002年から開始された同制度は、国内では11例目。静岡県内では「静岡の茶草場農法」に続き2例目となる。

 今回認定された「静岡水ワサビの伝統栽培」は、伊豆市・下田市・東伊豆町・河津町・松崎町・西伊豆町と静岡市の3市4町の地域。伊豆地方では江戸時代から続く伝統農法「畳石式」が高く評価された。

 畳石式とは、伊豆半島中部を中心に開発された栽培方法で、1982(明治25)年ごろにできたもの。地盤を深く掘り下げ、大小の石を順に乗せて表面に砂利を置いた沢を作り、ワサビの苗を植え込む。これによってワサビの辛味成分であり、他の植物を寄せ付けない効果のあるアリルイソチオシアネートを地中に留めることなく洗い流し、ワサビの自家中毒を防ぎつつ大きなワサビを作ることが可能となった。

 今回の認定について、ワサビの加工卸を行っている山城屋わさび店(河津町梨本)の3代目社長の山城好一さんは「今回の世界認定によって、今までワサビに触れなかった人との接点になった。イベントなどを行うものとして、今後のチャンスにつながると思う」とコメントする。

 山城屋わさび店は1936(昭和11)年に開業したわさび加工会社。同社は地元のワサビ農家からワサビを買い上げ、メーカーの要望に合うワサビに加工し、原材料を出荷する事業をメインにしている。

 ワサビの出荷量はピークの1980年台に比べ、現在は3分の1ほどに減少し、同社は昨年50トンほどの出荷量となっている。山城さんは「食の嗜好性の変化と共に、バス旅行者が大量にお土産を購入する従来のスタイルから、個人旅行者の消費にシフトしているのも原因。現在は多様化し、従来通りの出荷では難しい」と話す。

 しかしながら山城さんは「近年はワサビ漬けだけにこだわらず、テレビでも話題になったワサビ入りマヨネーズや、ワサビを使ったアヒージョなどの商品開発も盛んになった。また、イギリスでは日本食の普及に伴って栽培方法が輸出する傾向も。日本のワサビが注目するいいきっかけになるはず」と期待を寄せる。

 今後については「今は認定されただけで、生産者も加工者もうれしく思いながらも、どのように展開していけばいいか考えている時期。生産者・加工業者・メーカーが一丸になり、ワサビの新しい未来をつくるきっかけと捉え、多くの人に愛される商品にしたい」と話す。

 営業時間は9時~17時。火曜定休。

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