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狩野川資料館で企画展「水のかたりべ」 狩野川台風の「記憶」集める

600枚の記録写真と松本さん(左)と住さん

600枚の記録写真と松本さん(左)と住さん

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 企画展「水のかたりべ」が11月12日から、狩野川資料館(伊豆の国市墹之上)で行われている。主催はクリフエッジプロジェクト。

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 1958(昭和33)年に発生した狩野川台風をテーマにした同展。狩野川台風は、1958(昭和33)年9月27日に神奈川県に上陸した台風で、伊豆半島を中心に死者・行方不明者1269人、家屋の全半壊・流出が1万6743戸という甚大な被害をもたらした台風。

 会場には、資料館に保存されていた、台風の被害状況を写した写真およそ600枚とオブジェを展示するほか、30分のドキュメンタリー映像も上映する。

 上映される映像は、台風で最も被害が大きかったといわれる熊坂地域に在住している松本圭司さん(68)が体験したことを中心に制作。松本さんが自らの記憶を頼りに、当時の風景や実際に被災した人々と当時を振り返る映像となっている。

 今回の展示に関して、企画・制作した三島市在住の美術家・住康平さんは「3年前に丹那断層をテーマにした展示会を行った後、別の企画で松本さんに会った際、松本さんの体験談を聞いた。松本さんが持つ経験にとても興味を持ち、今回の展示会を企画した」と話す。

 狩野川台風が発生した当時、松本さんは小学生3年生。熊坂地域の多くの家屋が洪水で流される中、松本さんの自宅は流されず無事だったという。

 松本さんは「地域のほかの人たちは甚大の被害を受け、その話を共通項目として話すが、自分はその会話に入れなかった。無事だったことに違和感とジレンマを覚えた」と振り返る。

 今回の展示について「死者数や被害状況など数字に残る記録は、長く引き継がれていく。悲惨な出来事や減少は多くの人に語り継がれる。自分が経験してきた違和感やジレンマ、積み重ねてきた体験など記録ではない、記憶を伝えていければ」と松本さん。

 住さんは「プロジェクトは土地の歴史や災害の歴史をアートでアップデートしていく企画で、今回はその調査の発表。この展示をきっかけに作品の制作につなげていきたい」と話す。

 11月17日には住さんと松本さんらが出演するトークイベント「アートが災害史をアップデートする」も開催予定。13時30分~15時30分。定員30人。参加無料。

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