伊東にあるホステル「K'sHouse ItoOnsen(ケイズハウス伊東温泉)」(伊東市東松原)の宿泊数が、9月末で延べ9,000泊を超えた。
国の登録有形文化財であり築100年近くの歴史を持つ「旅館いな葉」を2010年に取得し、ホステルとして運営を開始した同施設。
大正期から昭和期に作られた地上3階・地下1階の建物で、部屋数は19部屋。当時の趣を残したまま、ドミトリーや個室など素泊まりとして提供する。食事や過度なサービスを撤廃し、ドミトリーは2,980円からの低価格が魅力となっている。
施設を利用するのは、外国からのバックパッカーがメーン。割合は8割ほどで7,000泊を超える。利用者の国籍はフランスやイギリス、アメリカなどからの客が多くを占める。理由は海外旅行のクチコミサイトでの評価。世界最大の旅行サイト「トリップアドバイザー」で、2014年度のエクセレンス認証を受けている。
その効果もあり、今年8月末の時点で延べ宿泊数は9000泊を超え、前年同月比の25%増となった。
同施設マネジャーの岡部正郎さんは「海外の旅行経験者たちが帰ってから評価してくれるので、多くの人たちがここに集まる。100年以上歴史のある建造物で宿泊するのが目的で来日する利用客も。海外旅行者は古い歴史の建物に関して尊敬の念があり、多くの人が大事に使ってくれる。膨大な広告宣伝費や過度のサービスを行わないことで料金に還元することができる」と話す。
また、同施設では4時間ほど施設運営の手伝いをする代わりにドミトリーの宿泊料金を免除する制度を利用する渡航者も多い。
そうしたスタッフは「ヘルパー」と呼ばれ、呼びやすい通称がある。茜(あかね)さんは台湾出身の30歳で、貿易会社を退職してから同施設のヘルパーとして5月から滞在している。茜さんは「海外のクチコミサイトで知った。台湾で見た宮崎駿の『千と千尋の神隠し』のような世界が実際にあり、憧れて訪れた」という。「日本人スタッフや海外からの利用者から、日本語や英語を通じて文化を学ぶことができる。他国からの利用客とのコミュニケーションを楽しんでいる」と日々の楽しみを話す。
現在、利用客の減少やコスト高のために廃業する旅館も多い点について、岡部さんは「サービスを簡素化し、多くの人を受け入れることにより、歴史的建造物を見に来る目的として利用する方法もある。まだ旅館の魅力を出し切っていない部分もある」と話す。「多くの外国人利用客は伊東の観光ではなく、施設を目的としてくる。飲食や観光は市内に循環するのもこの施設の特徴。今後はこのような方法を伝えていきながら、伊東だけでなく日本の温泉旅館などに新しいインバウンドの方法を伝えていきたい」と、今後の日本旅館の可能性について話す。