江戸時代の婚礼料理を再現した試食会が9月12日、国重要文化財「江川邸」(伊豆の国市韮山)で行われた。主催は「富士・箱根・伊豆国際学会(FHIX)」(三島市中央町)。
同学会は、富士・箱根・伊豆地域の観光資源や芸術、化学・工学、農業などの専門家の知と実践をつなぎ地域活性化を目指す団体。今回の試食会は静岡県が中国と韓国の都市と文化交流を通して相互理解を促進する企画「東アジア文化都市2023」事業の一環として行った。
再現したのは、江戸後期の韮山代官・江川英龍の叔父である陽三郎が1803年に婿養子に入る際、婚礼の場で振る舞われた料理。江川家に残る献立の文献を基に、出張茶懐石・仕出し「耕心庵(こうしんあん) 次五ゑむ(じごえむ)」(伊豆の国市古奈)の芝山崇志さんが地元産の魚や野菜を使ったタイの昆布締めや吸い物、煮物、「かすてら玉子」など15品を再現した。
芝山さんは「レシピがなく、写真や絵も残っておらず、分からないことだらけで再現に苦労した。アイナメやタケノコ、クワイなどが使われていることから春先の婚礼だったと思う。汁物が3品あるので、婚礼の時間が長かったのでは。昔の料理は色がシックで味付けが濃い。色味より食材が持つ意味などで華やかさを表現していたと思う」と話す。
この日は、中華料理店「華味(ファーウェイ)」(沼津市大手町)の関口寛さんが、婚礼料理を中華にアレンジした料理も振る舞った。枝豆・カボチャ・緑豆のムース、落花生の紹興酒漬け、枝豆の日本酒漬け、アワビのかき油煮込み、キクラゲ入りカステラ玉子など、21品を提供した。
同学会食文化担当の宇野秀彦さんは「地元民や観光などでこの地を訪れる人に、古くから歴史や文化のある富士・箱根・伊豆地区の食文化を再発見し、新しい形のガストロノミー(美食学)を創造できたらと思いプロジェクトを進めた。江川邸の婚礼の献立を細かいレシピがない中、柴山さん、関口さんに今までの知見と想像力で、ガストロノミーとして楽しんでもらえる料理を作ってもらい感謝している」話す。
宇野さんは「今回の料理の内容について、10月15日に韮山時代劇場で行うパネルディスカッションで一般の人にも公開する予定。今後ウェブサイトや冊子を作成し、さらに多くの方に知ってもらいたい」とも。