「よい子の芋煮祭」が11月24日、「かのがわ風のテラス」(沼津市上土町)で開催された。
東北地方の秋の風物詩「芋煮会」を再現するために初開催した同イベント。子どもから高齢者まで70人が参加し、材料のカットから調理までを全員で行いながら秋の味覚を楽しんだ。
主催したのは、愛知県出身・沼津市在住で沼津観光協会アンバサダーを務める「よい子」こと武藤弘さん。武藤さんは「仙台市役所に派遣勤務していた2013(平成25)年~2015(平成28)年の約1年半、東北で経験した芋煮会の文化に感銘を受けたのがきっかけ。屋台型のイベントが根付きつつある沼津で、みんなが一緒に料理を楽しむスタイルのイベントがあってもいいのではと、今年の夏に企画を立ち上げた」と話す。
芋煮の具材となる里芋は、地元・沼津産の「大中寺いも」と、山形県で幻の里芋と呼ばれる「悪戸いも」を用意。参加者はチームに分かれ、野菜を洗う、皮をむく、切る、煮込むところまでを全て屋外で担った。完成したのは、牛肉としょうゆで仕上げる山形風芋煮と、豚肉とみそが決め手の宮城風芋煮。食べ比べを楽しんだ後、最後はカレールーとうどんを投入して「味変」させて味わった。
会場にはクラフトビールや山形の日本酒などの酒も用意し、「作って食べる」「乾杯する」「初対面の人同士が自然と仲良くなる」東北式の芋煮文化を、多くの参加者が体験した。
沼津から参加した30代女性は「人生初の芋煮は驚くほどおいしく、牛肉のうまみたっぷりの芋煮は家でも再現したいと思った。大中寺芋は煮込んでも崩れず、ふっくら主役級だった。穏やかな秋晴れの中、日中からお酒を飲むこともでき、とても楽しい一日だった」と話していた。
武藤さんは「開催までの準備は不安も多かったが、当日は参加者が自主的に役割を分担し、最初はぎこちなかった子どもたちの包丁の使い方が段々上手になっていく過程を見ることができた。赤ちゃんからシニアまで、全員で同じ鍋を囲めたのは特別な景色だった」と振り返る。
2021年に沼津へ移住して丸4年。「知り合いゼロで始まったが、飲むことが好きな性格もあり、人とのつながりが一気に広がった。東京にいた頃には考えられなかった密な距離感が沼津らしくて心地いい。芋煮は山形と宮城の2地域以外もあるので、来年以降、探求していけたら」と話す。