2023年から沼津市地域おこし協力隊員として活動する今田隼輔さんが社長を務める「かんきつ商社Aquamarine(アクアマリン)」(沼津市西浦久連)が12月18日、ジュース加工施設の稼働を始めた。
「かんきつ商社Aquamarine」のジュース加工施設(関連画像3枚)
愛知県内の自動車メーカーで事業戦略に携わっていた今田さんは、結婚を機に沼津へ移住。活動の中で、味は良いのに傷や見た目の問題で廃棄される「西浦みかん」の現状に衝撃を受け、「『もったいない』をアップサイクルする」をコンセプトに掲げた商品開発に乗り出した。
今田さんは昨年、西浦みかんを使ったノンアルコールスパークリングジュース「Mikan de Nishiura non-alcoholic Sparkling」を、今年は「西浦レモネード」を使った「Nishiura Lemonade non-alcoholic Sparkling」を、それぞれ発売。長野県の業者に加工を委託していたが、輸送コストの増大や開発の小回りが利かないなどの課題に直面。「地域に加工施設がなければ何も始まらない」と決意し、かつて地域で60年愛された豆腐店跡を自らDIYで改修。総額1,100万円に及ぶ投資や、難易度の高い「清涼飲料水製造業」の許可取得、融資の壁などを乗り越え、今年7月の着工から本格稼働へと至った。
施設では、1時間で最大200キロを処理できる搾汁機や、約50リットルの回転釜、殺菌槽などを完備。100キロ(720ミリリットル瓶約70本分)の小ロットからの受託製造を可能にした。果物を選別した上で、手作業でミカンなどの外皮をむき、パルパーフィニッシャー(裏ごし機)にかけて果汁を搾り、搾った果汁を回転釜で加熱し、灰汁(あく)を手作業ですくって雑味を取り除いた後、瓶に充填(じゅうてん)・打栓する。
営業許可が下りた11月末からわずか3週間で、熱海や稲取などの農家や県外の会社などから問い合わせが相次いでいるという。今後は自社ブランドのミカンジュースのほか、トマトジュースや甘夏ジュースなどの受託加工を行う。
今田さんは「1トン以上の大ロットでないと受け付けてもらえなかったり、県外の工場まで運ぶ必要があったりと、これまでジュースを作りたくても作れなかった農家の受け皿になりたい。一年を通して稼働でき、てんてこ舞いになれたら」と意気込む。