ハンセン病をテーマに命の尊さを描いた紙芝居「わたしの命の物語」の展示が4月9日、沼津市立図書館(沼津市三枚橋町)の展示ホールで始まった。
紙芝居「わたしの命の物語」を読む深澤慎也さん(関連画像4枚)
同作は、沼津市内のアートユニット「ペトロアンドヨゼフ」の田川誠さんと深澤慎也さんが制作し、同市へ寄贈したもの。脚本は小説「あん」の作者で知られるドリアン助川さんが手がけた。
作品は、過去のハンセン病患者に対する差別や隔離政策の歴史を背景に、「生まれることができなかった命」に焦点を当てながら、人権や命の意味を問いかける内容。全34枚の絵で構成し、紙芝居としては異例のボリュームとなっている。
田川さんは、2015(平成27)年に映画「あん」と出合いハンセン病の歴史を知ったことをきっかけに、ハンセン病療養所へ通いながら約10年にわたり、ハンセン病をテーマにした50点以上の作品を制作。
制作の背景には、「全国ハンセン病療養所入所者協議会」の事務局長を務め、ハンセン病回復者支援に関わってきた故・藤崎陸安さんの存在がある。ハンセン病に関する紙芝居を作りたいという道半ばで亡くなった遺志を受け、妻の美智子さんらと共に企画を進めた。通常は文章が先行する紙芝居制作に対し、同作は「絵から始まる」独自の手法で完成。約50枚の絵の中からドリアン助川さんが絵を選び、順番を考えて文章を付けた。
作品には、隔離された療養所での悲しみだけでなく、喜びや希望も表現。深澤さんは「直接的に悲しさを描くのではなく、明るく温かい色彩の中にメッセージを込めた」と話す。
同館の望月美恵さんは「素晴らしい紙芝居なのであえて余計な装飾はせず、ライトの温かな光で照らし、絵と文章を広い空間に展示した。悲しいストーリーだが、そう感じさせない絵の色使いが美しい。紙芝居の貸し出しも行っているので学校などでも借りてもらい、子どもたちに読んでほしい」と話す。
深澤さんは「ドリアンさんが、僕たちの伝えたいことを十二分に表現してくれた。過去の悲しい歴史を伝えるだけでなく、これからを生きる子どもたちに生きる喜びや人生の素晴らしさを感じてほしい」と話し、田川さんは「コロナ禍の際、コロナに罹患(りかん)した人が人権侵害のような厳しい目を向けられたこともあった。ハンセン病という風化させてはいけない歴史を、アートの力で伝え続けたい」と来場を呼びかける。
開館時間は9時30分~19時(土曜・日曜・祝日は17時まで)。月曜休館。今月29日まで。