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熱海の福祉施設がグッドデザイン賞 デザインで「働く意欲」膨らむ

吹き抜けの階段に立つ所長の荻沢さんと、1階で作業する利用者と職員たち

吹き抜けの階段に立つ所長の荻沢さんと、1階で作業する利用者と職員たち

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 熱海にある障がい者福祉施設「熱海ふれあい作業所」(熱海市網代)が10月4日、2017年度グッドデザイン賞を受けた。

食事が見えるキッチン

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 今年のグッドデザイン賞の応募数は約4000件。うち1200件ある受賞の中に同所が選ばれた。現在までの60年間約4万4000件の受賞作品がある中、福祉施設としては国内で2例目の受賞となった。

 同所は昭和期から小規模授産施設として、身体・知的・精神の障がい者の福祉施設として活動。活動内容は、熱海市からの依頼を受け、ガラスや乾電池などの廃品分別や土産物の封入や荷造りなどを請け負う業務をメインとしている。

 同所所長の荻沢洋子さんは「NPO法人になることによって利用者がそれまでの10人から20人への倍増し、耐震や従業員の安全面を考えると改築を検討せざるを得ない状況だった」と建設に至る経緯を振り返る。

 同施設の設計を担当した「MNoka Architects(ミノカ・アーキテクツ)」(横浜市)の牧野宏一さんの作品を見て荻沢さんは「信頼できる人に出会えたと思った。会話をしていくうちにさまざまな要望や思いを聞いてくれた」と振り返る。

 牧野さんは職員や利用者たちの話を丹念に聞き、仕事の導線や日々の楽しみなどを探っていったという。「利用者や職員らの楽しみは、毎日の昼食。ここではみんなのやる気や頑張りを応援するため、食事にはこだわっている」と荻沢さん。

 2016年11月に完成した同施設は、1階に顔の見えるアイランド式のキッチンを設置するほか、作業をしている2階の職員にも「匂い」が伝わる吹き抜けを採用した。海が目の前にある環境を生かし、窓を大きく作り、採光も重視したという。

 改装した物件について、荻沢さんは「安全・安心の要望はあったが、食事を中心とした設計をしてもらったのはうれしかった。福祉施設というと必ずしも明るいイメージでないが、来場者には『まるでカフェ』みたいだと言われる」と話す。

 同所の改装は「それまで休みがちだった利用者が、毎日楽しく出所してくれることもあるという。利用者の出席率も大幅に上がり、仕事が多くできるようになった」(荻沢さん)と改装によって働く意欲が向上するなど、意外な効果もあったという。

 40年ほど通所している70代の男性は「新しくなってとてもうれしい。(同所の自慢について)食事がおいしいこと。新しい施設になって、より食事がおいしくなったと思う」と笑顔を見せる。

 グッドデザイン賞受賞については「ほかの施設にない、楽しいデザインをしてもらった。受賞を聞いたときは、正直『やはり』と確信する部分があった」と荻沢さん。

 「今後は作業利用だけでなく、多くの人が交流の場として使ってもらえれば。賞を受けたことによって、訪れる人・利用する人が増え、さまざまな交流がここで生まれてほしい」と期待を寄せる。

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