日本競輪学校(伊豆市大野)で5月9日、入学式が行われた。
同校はプロの競輪選手育成を目的とした日本で唯一の競輪専門学校。全寮制で約10カ月間、教育を受けながら競輪選手の資格を取得する。毎年全国から競輪選手を目指す若者たちが門戸をたたく。
今年は男性70人と女性20人の合計90人が入学した。経歴はさまざまで学生時代に自転車競技を行っていた生徒などが中心という。中には身体能力の高さから、他競技からの転入組も見受けられる。
新入学の生徒たちはこの日、紺色の制服を身に着け、男子生徒は丸刈り、女子生徒はショートカット姿で式に挑んだ。
今年入学した生徒の中で最年長者は、北海道函館市出身の伊藤のぞみさん(30)。
伊藤さんは眼科医院で看護師として11年間勤務していた経歴を持つ。伊藤さんは「イラストを描くのが好きで当初は美術の学校に進みたかったが、両親の勧めもあり、堅実な看護師の道を選んだ」と振り返る。
伊藤さんは競輪選手を目指そうと思ったきっかけについて、「5年ほど前、知人と一緒に競輪場を訪れた時、初めて競輪選手を見て、自分の力で競技する姿にかっこよさを感じた」と話す。
その後、伊藤さんは女子競輪「ガールズケイリン」の存在を知り、さらに関心を持ったという。「その際出合ったのが、北海道から女性競輪選手を輩出するホワイトガールズプロジェクトだった」とも。伊藤さんはSNSを通じ、現在の師匠である藪下昌也さんに出会い、同プロジェクトのメンバーとして競輪学校に入学するためのスキル習得に励んだ。
「当初は両親に内緒ではじめた競輪の練習だったが、各種メディアから取材を受け、報道を通じて親戚や近所の人伝いで両親に知られることになった。しかし、両親からは励ましの言葉を掛けられた」と伊藤さん。
伊藤さんは2017年、同校を受験したが不合格となり、ほかのプロジェクトメンバー2人に後れをとったものの、看護師の仕事を辞めて受験一本に専念。努力が実り、今年晴れて競輪学校に入学した。
伊藤さんは「まだまだ力が足りない自分の課題を克服しながら立派な選手になりたい。学校生活では、社会人経験がほかの生徒よりも長いため、精神面でほかの生徒たちを引っ張っていく存在になれれば」と意気込む。