戸田港(沼津市戸田)で9月9日、トロール漁(底引き網漁)が始まった。
トロール漁は、船の両側に約1500メートルの長さのロープを垂らし、その先に袋状の網を付け、深い海の底を引くようにして魚を捕獲する漁法。毎年9月上旬に漁が解禁され、翌年の5月中旬まで行われる。
トロール漁では、世界最大の甲殻類といわれるタカアシガニや、メヒカリやメギスをはじめ、食用に適さない深海魚なども多く捕獲される。
青山沙織さんは戸田地区の地域おこし協力隊だった2020年4月、トロール漁で捕れた深海魚を全国の深海魚研究家や愛好家に向け発送する「深海魚直送便」サービスを試験的に始めた。
トロール漁で収穫された深海魚を青山さんが買い取り、注文者用に選別・梱包(こんぽう)し、鮮度を保ったまま直送するサービスはこれまで約1000箱を出荷している。
中でも食用に適さない深海魚などを詰め込んだ「深海魚ヘンテコ便」は大学や水族館の研究施設や、愛好家を中心に人気があり、期間中1週間ほどだが、青山産の元にはすでに30箱以上の「ヘンテコ便」の注文が寄せられているという。
青山さんは「通常は積載量の問題や船の氷の問題で、はじかれていた深海魚に光が当たり、多くの人がその価値を認めてくれている」と話す。青山さんは深海魚の鮮度を保つため、水揚げや配送方法に工夫し、なるべく鮮度の高い深海魚を提供する努力を行っているという。
現在、今年初頭にクラウドファンディングで集めた資金を元手に、魚類の加工所開設と、深海魚を使った加工食品の販売を目指しているという青山さんは「生鮮や研究目的だけでなく、幅広い深海魚の価値提供に尽力していきたい。ヘンテコ便は貝など利用客のニーズに対応できるようにしたい」と意気込む。
ヘンテコ便は1便4,400円~。「深海魚直送便」ホームページで注文を受け付ける。