トークイベント「火曜日のヨル喫茶(火ヨル)」が10月13日、シェアスペース「PASO(パッソ)」(沼津市大手町)で開かれた。
「火曜のヨル喫茶」の様子(関連画像8枚) = 沼津で元フェンシング日本代表夫婦が新たな挑戦 競技と仕事の二刀流に
「火ヨル」は、さまざまな人が集まり、誰かの話を酒の肴に交流するコミュニティーイベント。今年4月28日から毎週火曜日に開催している。
今回は元フェンシング日本代表の渡邊裕斗さん、向江彩伽さん夫妻が登壇した。
テーマは「アスリートキャリアの新しいカタチ。夫婦で挑む『フェンシング×税理士事務所』の二刀流ライフ」。今年春に沼津市へ移住した2人が、競技との出合いや現役時代の経験、引退後のキャリア、現在の働き方、沼津での今後の目標について話した。
渡邊さんは1998(平成10)年、岐阜県生まれ。高校時代にフェンシングを始め、スポーツ推薦で中央大学商学部経営学科に進学した。高校時代には全国高校選抜、インターハイ、国民スポーツ大会の三冠を達成。U20ジュニアワールドカップ・ソチ大会では個人・団体共に3位に入賞し、男子サーブル個人では日本人初のメダルを獲得した。全日本選手権では2017年と2020年に個人3位に入賞するなどの実績を残した。2020年に現役を引退後、ソフトバンクグループのSB C&Sに入社。福岡への転勤などを経て、2026年春から木村美都子税理士事務所・木村昌宏税理士・社労士事務所に勤務している。
向江さんは1998(平成10)年、福岡県生まれ。12歳の時、スポーツのタレント発掘プロジェクトをきっかけにフェンシングと出合い、JOCエリートアカデミーに入校した。2014(平成26)年のアジア大会では団体に出場し、2017(平成29)年のユニバーシアード大会では団体優勝。全日本選手権では2016(平成28)年に個人3位、2018(平成30)年に個人2位に入賞したほか、団体でも複数回優勝した。2024年の国民スポーツ大会では総合優勝を果たした。
中央大学に進学後、城北信用金庫にアスリート職員として入社し、競技を続けた。2024年のパリオリンピック出場を目指したが、出場はかなわず、同年に現役を引退。その後、夫の渡邊さんがいた福岡で過ごし、2026年春に夫婦で沼津市へ移住した。現在は同事務所でブランドマネジャーを務めている。2人が取り組んできたのは、いずれもサーブル種目。渡邊さんは高校時代にフルーレを経験した後、大学進学を機にサーブルへ転向した。一方、向江さんは競技を始めた当初からサーブルに取り組んできた。
トークでは、競技を始めたきっかけについても紹介。渡邊さんは高校時代、身長の高さに注目したフェンシング部の顧問に声をかけられたことが競技を始めるきっかけになったという。向江さんは、スポーツの才能を発掘するプロジェクトへの参加を機に声をかけられ、12歳で福岡から東京へ。上京後の1、2年はホームシックで泣いていたことも振り返った。
現役引退後のキャリアについて、渡邊さんは現在、顧客の黒字化を目指した経営支援に携わるほか、DXやAIの活用支援にも取り組んでいる。向江さんはブランドマネジメントを軸に、ウェブデザインやグラフィックデザインなどを担当。競技で培った経験を生かしながら、新たな分野で専門性を磨いている。
向江さんが取り組むブランディング活動は、2026年度の「ブランド・マネジメントアワード」にもノミネートされた。11月28日に最終プレゼンテーションが予定されている。
話題は、2人の移住先となった沼津市のフェンシングを通じたまちづくりにも広がった。
沼津市では2019年、フェンシングを通じたまちづくりを推進するため、日本フェンシング協会と全国初の包括連携協定を締結。2021年には沼津駅北口のBiVi沼津・3階にフェンシング専用施設「F3BASE」がオープンした。2025年には、日本フェンシング協会の推薦を受け、同施設が日本オリンピック委員会(JOC)の「JOC認定競技別強化センター」に認定された。
オリンピック代表経験者の長良円さん、長良将司さん夫妻も沼津市を拠点に活動している。2021年にはアスルクラロフェンシングアカデミーを創立し、競技の普及や地域の活性化に取り組むほか、ジュニア日本代表選手の輩出などにもつなげている。
学生時代から沼津がフェンシングのまちとして知られていたことについて、向江さんは「当時は学生だったので、よく沼津に行くなと思っていた」と振り返った。
今後の活動について、渡邊さんは「フェンシングがとても好き。沼津からオリンピックに出場する選手を輩出したい」と話す。沼津で育った選手が競技を続け、やがて地元に戻って指導者として次の世代を育てる。そんな好循環を生み出すことを目指している。
向江さんは「小さい頃、フェンシングを始めた時から、いい環境で学ばせてもらった。今度は自分が還元する立場」と話す。指導と仕事の両面から地域に貢献していきたいという。
競技中心の生活を送ってきた向江さんにとって、社会人として仕事に取り組むことには抵抗もあったという。それでも、職場のサポートを受けながら新たな分野に挑戦している。「二刀流を極めていきたい」と、競技で培った経験を仕事や地域での活動につなげていく意欲を見せた。