天城にある老舗旅館「落合楼村上」(伊豆市湯ケ島、TEL 0558-85-0014)で3月21日、イベント「伊豆の食を詠む」が開催された。主催は静岡県。
2011年から続く同イベントは今年で4年目。県マーケティング推進課の横山雅機さんは「静岡の食材を使うイベントは多くあるが、当イベントでは料理人の活躍をテーマにし、食材や食だけでなく食文化の発信を求めていくのが目的」と話す。
当日は約50人が参加。静岡県出身の歌人・田中章義さんが、天城記念館内にある夕鶴記念館で文学講座を開いた。田中さんは伊豆にまつわる歌人や文人を取り上げ、伊豆の風景を描いた作品などを紹介した。
その後、落合楼村上で昼食と歌会を行った。昼食は同館の料理長の小沢豪総料理長が手掛けた、シカ肉やわさびなど伊豆半島の食材を使った会席コースを用意した。参加者らは昼食後、「食」をテーマに歌を詠んだ。
田中さんは、「おいしい」を禁句にした歌を作るよう参加者たちに指示。参加者たちは想像力を働かせながら、旅の思い出を歌にしたためていた。
約30作品の中から、田中さんが選んだ優秀賞は静岡市の男性が詠んだ「来し方を共に歩みし妻ありて伊豆の古宿の祝の膳よ」が選ばれた。
田中さんは「二人で共に歩んできた日々の中にもこの日の料理のように、甘いもの、あたたかいもの、味わい深いものが色彩豊かに刻まれている。起承転結に満ちた料理と夫婦で過ごした歳月を重ね合わせたこの歌に引かれた」と講評する。
同館の村上社長は「町おこしとなると、食だけの食べ歩きや、文学者にちなんだイベントも多いが、今回のように複合的に組み合わせることによって、より深みのある企画となり、今回の協力を引き受けた。今後もこのような地域と食が盛り上がるイベントは継続して行っていきたい」と話す。