国立遺伝学研究所(三島市谷田)の斎藤成也(なるや)教授率いる研究チームが9月1日、現代の「日本列島人」と祖先である「縄文人」との遺伝情報の共通部分は約15%であるとの研究を発表した。
同研究は、縄文時代の遺跡である三貫地貝塚(福島県)で発見された縄文人の奥歯から細胞のDNAを採取し、解析したもの。歯から採取されたDNAからは、約28億7800万の塩基が見つかったが、多くはバクテリアやヒト以外の塩基によるもので、縄文人の塩基と分かったのはそのうち1億1500万ほどだったという。
斎藤教授は「全体の数字からすれば、わずかな割合だが、3000年の風化の中にも遺伝子情報が非常に多く見つかったのはとても有益なこと」と話す。
同発見を元に情報を解析した結果、現代人である日本列島人と縄文人のDNAの共通点は約15パーセントと判明したという。これによって、日本にやってきた住民たちが、他の種族たちと交配し、稲作を始めたとされるヤマト人や現代の日本列島人に進化したルーツの一つが分かった。斎藤教授は「当初は縄文人の共通部分がもっとあると推定していたが、意外に少ないことに驚いた」と話す。
論文は斎藤教授が責任執筆者となって12人の研究者らが共同執筆したもの。斎藤教授は主にデータの解析などを担当したといい、「ここ十数年の遺伝子研究の進化のおかげで、安価でより詳細、膨大なデータ結果を得ることができるようになった。わずか一つの歯からも膨大なデータを得ることが可能となり、科学の面から人類の進化や歴史にアプローチすることができた」と話す。
斎藤教授は「今後も多くのヒトゲノムの解析が進んでいけば、耳垢(あか)の粘着や顔の特徴、そして背格好なども解明できる。そうなると、より縄文人や祖先の特徴を立体的に表現できるようになる。現在のヒトのDNAの個体差はわずか0.07パーセントといわれている。今後多くの研究材料が集まり、データを解析していけば、たったと思われている0.07パーセントでも、多くの異なる情報を私たちに教えてくれることになる」と話す。