函南の機械部品メーカーが農業参入-「甘くない」農法で甘いトマト目指す

新商品のトマトジュースを持つ渡辺社長と原さん

新商品のトマトジュースを持つ渡辺社長と原さん

  • 12

  •  

 自動車等の機械部品メーカー「協和アルテック」(田方郡函南町)は、8月1日から「完熟トマトを絞ったストレートジュース」の試験販売を始めた。

[広告]

 1960(昭和35)年創業で、バイクや自動車、電動自転車などのモーター部品を扱う同社。現在は函南町に2つある工場のほか、インドネシアのジャカルタでも現地法人を設立し生産を行っている。

 自動車部品メーカーの同社が農業に進出するきっかけとなったのが2008年のリーマン・ショック。同社の渡辺啓社長は「リーマンショック前に新しい生産拠点を計画していたが、将来の展望や国内生産を鑑みて事業転換を考えた。工業のジャンルに関して言えば日本には生産者が多く、参入する余地がない。それに比べて農業を考えると、製造業で培ったマニュアル化や生産の可視化など応用できる部分は多くあると感じ、工場予定地を農場に変更した」と当時を振り返る。

 同社は生産性の高い農法を研究し、静岡大学農学部が開発した農法を採用。トマトの栽培に適しているとされる標高300メートルの用地約15アールにビニールハウスを建設し、「丹那高原トマト」ブランドとして育成。施設内のトマトは土を使わず養液栽培で育成し、コンピューターによる管理を行い、温度や湿度だけでなく二酸化炭素や日照時間に合わせてハウスを管理。それによって高い濃度を狙った生産を行うことが可能になり、最高でメロンと同等の糖度16度のトマトを生産することができる。

 また、通常の農家であれば果肉を採取して糖度を測るが、同社は1個単位で糖度を計測することが可能で、糖度が統一されたトマトの出荷を行うことができるのも強み。「天候によって左右されたトマト農法だったが、徹底的に管理し、従業員たちの意識・情報を共有しながら育成することで、高い品質のトマトを安定した出荷ができた。トマトの育成は、水や日照時間の調整を甘やかすとだらしない製品になってしまう」(渡辺社長)と、厳しい農法について話す。

 成長が早く、糖度の高いトマトの育成が難しいこの時期は、糖度5~6の限定したトマトジュースの開発を行い、現在400本の試験販売を行っている。同商品は500ミリリットル1瓶に約1キログラムのトマトを使用し、塩分や調味料、保存料は一切入れない。賞味期限なども研究し、約1年半まで賞味期限を延長した。農業事業部の原績リーダーは「現在は丹那の農園付近でしか販売できなかったが、ジュースにすることによって、より遠くの販売所や委託販売が可能になるのでは」と期待を寄せる。

 今後について渡辺社長は「製造業のノウハウと農業の経験を生かし、今後はより高付加価値が付く野菜を提案していきたい。また、安定生産することで、甘いトマトをより多くの人に味わってほしい」と話す。

 価格は800円。販売・問い合わせは、南箱根農園(田方郡函南町丹那、TEL 055-974-4601)まで。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース