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沼津の注文洋服店が50年 「6万人座ったいす」と共に

創業と同年齢のいすと店主の輝之さん

創業と同年齢のいすと店主の輝之さん

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 JR沼津駅南口近くにある注文洋服店「サルトリア ルイ」(沼津市大手町)が12月1日、創業50年を迎えた。

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 1972(昭和47)年に、現在の店主・勝又輝之さんの母である道代さんが、当時の富士急百貨店2階の一角で創業した同店。高級ブランドの服が並ぶ百貨店の中、道代さんのデザイン・製作した洋服は地域の女性たちに人気を集めてきた。

 母の背中を見て育った輝之さんは、服飾専門学校卒業後、実家の店に就職。婦人服やスーツの受注生産を始め、2008(平成20)年、2代目店主となった。現在、オーダースーツだけでなく、ジャケットや「休日専用エプロン」など、来店客が求めるスタイルを提供している。

 輝之さんは「近年は職業やライフスタイルの多様化でスーツを着る人が減っているが、スーツ以外でもその人の『一張羅』を作るために、その人の生活やなりたい姿を聞くことにしている。いすに座ってしっかり聞くのは、母の代から変わらない」と話す。

 店舗で来店客が腰掛ける小さないすは、母・道子さんが創業時に購入した物という。50年を経た現在も来店客が座り、なりたいスタイルを語っていく。創業50年で座った人数について、輝之さんは「ざっと計算すると6万人。いすと共に多くの人に出会ってきた」と振り返る。

 いすは何度も修復を重ね、現在も使い続けている。輝之さんは「店舗の移転やリニューアルを重ね、多くの資材を入れ替えていたが、創業の象徴であるいすは大事に使っている。当時の女性は社会的信用も現在ほど高くなく、店舗を開くのも苦労したと聞いている。その時に百貨店の月賦で購入したのが、母にとっての思い出になっている。今後もこのいすと一緒に、来店客の要望に耳を傾け、町の洋品店として存在し続けていきたい」と意気込む。

 営業時間は10時~19時。水曜定休。

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