伊豆の国市のピオーネ発祥の原木から収穫した実を使った初の赤ワイン「Pione de HIDEO(ピオーネ・デ・ヒデオ)」の販売が1月23日、「中伊豆ワイナリーシャトーT.S」(伊豆市下白岩)で始まった。
伊豆の国市のピオーネ発祥の原木から収穫した実を使った初の赤ワイン「Pione de HIDEO」
大粒で紫黒色の「ピオーネ」は1957(昭和32)年、伊豆の国市出身の育種家・井川秀雄さんが「巨峰」と「カノンホール・マスカット」を交配して誕生させたブドウ品種。1973(昭和48)年に山梨県に権利を譲渡し、山梨県から全国に普及した。2019年産特産果樹生産動態等調査によるブドウ品種別生産量で巨峰に次ぐ2位を記録している。原木は今も同市の「サン・ヴァンサンファーム(井川秀雄葡萄)」の畑に残され、井川さんの孫で園主の加々見宏子さんが守り続けている。
加々見さんが大病を患って入院したことをきっかけに、「今やらなければ」と決意し、同ワイナリーに直談判。約1年かけて剪定や栽培管理などを同ワイナリーの農場責任者が行い、原木など8本のピオーネから約56キロを収穫。750ミリリットル瓶39本のワインが完成し、加々見さんの80歳の誕生日となる1月23日から販売をスタートした。
ワインのラベルは沼津市在住のイラストレーター、ヘレンさんが担当。ピオーネを両手で包み込む井川さんの手元を描き、井川さんの口ぐせだったという「誰が何と言っても、やってみなければ分からない」という言葉を英語で表記した。
同ワイナリー農場・工場総責任者の松本智康さんは「ピオーネの糖度は22度を超えていて、ヨーロッパ系の赤ワイン用のブドウと遜色なかった。糖度が高いのに、酸も残っていて、手を加えず酵母を入れるのみでブドウ由来の味と香りが楽しめる辛口のワインに仕上がった」と話す。
加々見さんは「10年以上前に一度ワインを試作してもらったことがあり、その時の味・色・香りがとても良くて頭の中にずっと残っていた。病気を患い、いろいろなことができなくなると感じ、念願のワイン造りを中伊豆ワイナリーにお願いした。香りもよく、色もきれいでとてもおいしい。料理に合わせたり、一人でのんびり飲んだりと、楽しんでもらえたら」と話す。
同ワイナリー農場責任者の塩谷友一朗さんは「今後もコンスタントにピオーネのワインを造っていく予定。ワインの製造本数を増やすのではなく、原木が長く生きていくことと、原木の子どもに当たる直系のピオーネを健全に育てていくことに徹していきたい」と意欲を見せる。
加々見さんは「これまでを振り返ると、『大変なこともいっぱいあったが、大変じゃなかったかも』と思えるようになった。20年前にノートに『守る、つなぐ、世界へ』と書き、これまで進んできた。ワインを通じてピオーネの発祥の地が伊豆だということを全国、そして世界の人に知ってもらい、ピオーネや伊豆の魅力を発信していけたら」とも。
価格は8,800円。中伊豆ワイナリーで扱う。