2020年の東京オリンピックのメーン会場である新国立競技場の設計が、建築家・隈研吾さんに決まり、熱海でも隈さんの設計作品が注目を浴びている。
隈さんの設計は、自然や景色に調和する「負ける」建築が特徴。高層マンションや大型建築物を景観に対して「勝つ」建築と称し、従来からある周囲の景観や歴史、本来ある素材を利用した建築を「負ける建築」と考え、多くの隈さんの作品に反映されている。
熱海には隈さんの代表的な建築物が旅館にも採用されていて、そのひとつが「星野リゾート 界 熱海」(熱海市伊豆山)にあり、宿泊客を中心に話題を呼んでいる。
同施設内にある「古々比(こごい)の湯」は隈さんが2003年に設計し建築されたもので、モダンなデザインが特徴の露天風呂。崖の上に立つ露天風呂は、脱衣場と湯船の敷居に柱や壁を極力取り払い、伊豆山から熱海の海を一望できる。
同施設支配人の瀬下翔さんは「隈さんの建築を知って訪れる人は多くないが、今回のオリンピックの件をきっかけに利用客から声を掛けられることが多い。館内の話題のひとつとして提供している」と話す。
瀬下さんは、風呂の特徴として「邪魔をする構造物が少なく、裸になって入る風呂だからこそ、建築が着込んでいない感じに共感を持つ。館内は明治から昭和期に建てられた建築物が多いが、伊豆の風景と歴史に溶け込んでいる、落ち着く風呂だ」と話す。
今回のコンペ決定に関して「隈さんは世界中を駆け巡る最も忙しい建築家のひとり。ぜひ仕事が落ち着いたら熱海に来てもらい、この風呂で疲れを癒やしてほしい」と話す。