伊豆修善寺にあるコミュニティースペース「ドットツリープロジェクト修善寺」(伊豆市修善寺)が開業して半年が過ぎた。
建設資材会社「古藤田商店」が所有する工場跡の土地(約2240平方メートル)にオフィス付き住宅12戸から成る同施設。プロジェクトデザインを担当し、自ら居住するNPO法人「NPOサプライズ」(同)代表の飯倉清太さんは「古藤田商店の古藤田社長から伊豆地域の活性化と同地の活用を話し合っていくうち、移住のテーマが上がった。居住のみを促す事例は多かったが、仕事が作られる環境まではない。当初は、家事と仕事が近いことでメリットのある女性や、弁護士や会計士などの士業をターゲットの一部として考え、この施設のプランを考えた」と話す。
同施設は2015年9月のプロジェクトの発表から施設ができるまでの半年間、入居者面談を実施。プロジェクト発表時には多くの関心を集め、期間中に33の個人・団体が入居を希望。全ての入居希望者に対して、古藤田社長と飯倉さんが面談を行った。古藤田社長は「一緒に仕事がしたい、と思う人たちを入居の基準にした。一緒に伊豆を盛り上げられる仲間になれそうな人に入居をお願いした」と話す。
同施設は1業種1社限定で、それぞれ個人事業主や中小企業が集まった。職種はカメラマンや白ビワを使った6次産業企画、コンビニエンスストアの経営者や、一級建築士にウェブ制作会社など多岐にわたる。
どの個人・企業も既に起業していて、新しいチャレンジを行おうとする次なる成長を求める事業者が多いのが特徴だという。飯倉さんは「それぞれ仕事を通じた分野を持っていて、独自のコネクションがある。起業を通じた経験を共有し、成長する手助けをお互いがしてくれる」と話す。
現在は12組が、それぞれの営業活動を行いながら、お互いのさまざまな取り組みを行っている。「例えばバーベキューも、1人が始めるとお互いの部屋から出てきて一緒に楽しむ。食事や酒を飲みながら、話すこともお互いのビジネスについてのアイデアが出たり、自身の人脈を紹介したりするなど、日々の暮らしの中でコミュニティーが形成されていく」という。
飯倉さん自ら同施設の管理棟にオフィスを構え、自身も暮らしている。飯倉さんは「特に管理という徹底的なことはやっていない。やることは芝生の水やりやバーベキューの火おこし。長屋の管理人のようだ」と笑う。しかし、飯倉さんは「自身が仕事のときは、水やりや町内の仕事などは住人たちが進んで行ってくれる。全員がポジティブで率先して行動してくれるコミュニティー。全員が同じベクトルで動いていて、従来のコミュニティーと異なり『押し付け』がない」と話す。
その長屋を俯瞰(ふかん)で見つめる飯倉さん。今後については、「ここで作られた利益の一部を、地域活動の補助としてさらに輪を広げていきたい。ここで住む人と、そして周辺地域がにぎわう流れをつくっていきたい」と意欲を見せる。