南伊豆町の中木地区で6月8日、海中で熟成した日本酒を引き上げる作業が行われた。
「海中熟成酒プロジェクト」と名付けられた同企画は今年で4年目。毎年同地区の沖合300メートル・水深20メートルに日本酒を沈め、半年間海中で熟成を促すもの。今年は酒蔵やバーなどから依頼された日本酒やワイン、ウイスキーなど約2000本を沈め、熟成に挑んだ。
海中に沈め熟成させることについて、同プロジェクト代表者で、日本酒バー「酒茶論」(東京都品川区)のオーナー、上野信弘さんは「ワインの海中熟成などがあり、日本酒でもできないかと考えたのがきっかけ。海中に半年ほど寝かせるのがベストで、それより短くても長くなっても酒に熟成の差が出てきてしまう。4年の間南伊豆で行ってきて、ある程度の成果を得ることができた。思っていた予想が確信へと変わった」と話す。
小雨がちらつく中、前日までに湾内に引き寄せられたかごを、この日、海中から初めて引き上げた。かごが上げられる瞬間、町関係者やダイバーや漁師などから歓声が上がった。
この日、プロジェクトに参加した、達磨正宗(岐阜県)の7代目蔵元、白木滋里さんは「海底で寝かせることによって、酒の風味が増してまろやかな味わいになる。すでに海底熟成の話を聞いた顧客の予約もある」と話す。
今後について、上野さんは「今後は自分だけでなく、日本各地で海中熟成の流れが増えれば。お酒の味はもちろんだが、各地の海で眠ったストーリーと一緒に日本酒を飲み比べ、楽しんでもらえれば」と話す。