沼津市は1月26日から、イベント「インターン付き出店体験 Neo商店街」の募集を始めた。
沼津市内での出店・起業を目指す人を対象とした事業の一環。事業は沼津で起業した商店主を招いて行う講演会、市内の商店に「インターン」できる職業体験、沼津新仲見世商店街(沼津市大手町)での出店体験など3段階のプログラムを用意する。
同事業を担当する沼津市商工振興課の二葉彩さんは「今後沼津には大型ショッピングモールの出店があり、環境は大きく変わる。だからこそ、コミュニケーションが重視され、個人店舗に学ぶことが多くあると思う。リアルな声だからこそ、実際起業に携わる人には即戦力になると思う」と話す。
インターン体験では市内の7店が協力に応じ、業種は精肉店や雑貨店、パン店、純喫茶など。商店街の個人店舗から苦労話や商売のコツ、沼津の特性などを学ぶことができるという。
そのうちの一店、純喫茶「ケルン」(沼津市大手町)は1935(昭和10)年創業の純喫茶。現在は2代目の藤原美恵子さん(80)と、60年以上同店に勤める望月よし江さん(86)の2人が切り盛りしている。1955(昭和30)年ごろに改築した同店には、地元を中心に店のファンたちが足しげく通う。
藤原さんは「昔は地元の開業医や代議士が集まり芸者さんとの待ち合わせの場所にも使われた。昔は初デートできたカップルも今はすっかりおばあちゃん。それでも2人でデートに来てくれる姿を見ると、とてもうれしい」と話す。
藤原さんと、「よっちゃん」と呼ばれる望月さん。しかし、望月さんはこの3月、引っ越しを理由に引退を予定している。藤原さんは春から1人で同店の運営を余儀なくされた。藤原さんは「よっちゃんがいなくなると店の運営に支障が出る。でも、父から譲り受けた店と顧客は何よりの財産。今はほそぼそでも続けていきたいと思っている」と話す。
今回のインターンの受け入れについて「若い人が商売に興味を持ってくれ、挑戦するのはいいこと。自分では何を教えて良いのか分からないが、沼津の特徴や苦労話を共有できれば」と藤原さん。「将来的には自分に代わるいい人材がいれば、と思うが、クセの強い店なので今の人は気にいるかどうか」と笑う。
二葉さんは「インターン先は事業継承を課題に持っている店も多く、10年後に商店街に残ってほしい店ばかり。この企画を通して、起業を支援するだけでなく個人店の継承者として検討する人にも参加してほしい」とインターン参加者に呼び掛ける。
インターンの申し込みは2月10日まで。インターン参加などのイベント参加は無料。