静岡県・沼津地域の茶園で5月2日、八十八夜を迎え一番茶の収穫がピークを迎えている。
雑節の一つ「八十八夜」は、立春から88日目に当たる日を指す。この日に摘んだ茶葉は上等な物とされ、このお茶を飲むと長生きするという風習がある。
市内の茶園はこの時期に、今シーズン最初に出荷する「一番茶」の収穫に追われている。まるも茶店(沼津市東椎路)の三須至高さんは「この時期の茶葉は、冬の寒さに耐えて甘みをしっかり持っている。また茶葉も柔らかく、香りが高いのが特徴」と話す。
今年は好天候に恵まれ、通常よりも早い4月下旬から茶摘みが始まった。三須さんは「ゴールデン・ウィークに収穫のピークを迎える。ほかが休んでいることにうらやましいと感じることもあったが、茶葉はデリケートで収穫が難しく、季節通りに収穫できるのはもっとうれしい」と笑顔を見せる。
三須さんは茶園農家の4代目当主として、茶畑と茶工場の運営、自社製造の店舗を運営している。三須さんは「30年ほど前まではお茶農家10件ほどあり、最盛期は1.5ヘクタールほどあったが、現在は10分の1程度」と話す。
減少の理由として、「人口減少に加え、ペットボトルのお茶の普及で、高級茶葉などの需要が減った。急須でお茶を入れる習慣も減っているのでは」とも。
三須さんは沼津の緑茶の特徴について「掛川などの西部のお茶に比べて、苦味と渋みが強いのが特徴。そのまま味わうファンも多いが、ご飯や茶菓子と一緒に飲んでもらうのがベストかと思う」とすすめる。
三須さんは製茶以外にも、卸企業と一緒にフレーバー緑茶の商品開発などもサポートしている。「紅茶のフレーバーティーなどは、花や果実の香りや味が強いものがあるが、この商品は緑茶の風味を中心にし、ほのかに果実のフレーバーが香るように工夫。若い世代にも愛されるよう工夫をしている」と話す。
三須さんはお茶を注ぐ行為にも注目し、お茶の注ぎ方や文化などを教えるために、各地でイベント出店なども積極的に参加。「今までは利用客を待っているだけの販売だったが、イベントに出店することで普段会わない人にアドバイスやアイデアをもらうほか、正しいお茶の入れ方を伝えることで、その人とのコミュニケーションも。今後は対面しながらお茶を販売し、よりお茶の魅力を広げていきたい」と意気込む。