戸田地域の特産品であるタカアシガニの放流が5月17日、戸田港(沼津市戸田)沖で行われた。
タカアシガニは、現生の節足動物では世界最大のカニとして知られている。深海トロール漁が盛んな戸田地域では特産品として食用として用いられ、古くから定食屋のメニューや土産物として人気がある。
タカアシガニの放流は、生態の解明や資源保護を目的に沼津市商工会戸田支所が1985(昭和61)年から毎年行っている。放流はトロール漁が5月15日に禁漁になるタイミングを見計らって行われ、例年、関係者と共に地元の小学生や観光客も参加している。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で2年ぶりに同商工会と漁協関係者、地元飲食店関係者など約10人で放流を行った。
同商工会観光サービス部会長の中島寿之さんは「年々タカアシガニが減ってきたことから『の一食堂』の中島茂司さんが約50年前に放流を始めたのがきっかけで、以後毎年行われている。約20年前から商工会が思いを引き継いで担当するようになった」と話す。
今年はカニを扱う戸田の地元飲食店や漁協からタカアシガニ63匹の寄付があったが、荒天のためこの日はそのうち約半数の、重さ1.5~4キロの26匹が放流された。
放流は、桟橋付近で重量の計測や性別確認などを行い、静岡県を示すアルファベットのSと4桁の個体番号を記したタグをカニに付けて、漁船で沖合へ向かった。参加者は、清めの塩と酒を海にまいた後、戸田港から500メートル沖の水深約80メートルの駿河湾に1匹ずつカニを放した。
中島さんは「雨だと表層の海水が薄まりカニが弱ってしまう可能性があるため今日は用意した半数を放流し、明日以降の天気を見て残りを放す予定。タカアシガニがどう移動するかや、成長速度などがタグで分かる。これまでに静岡県で放流したものが和歌山県沖で発見されたこともある」と話す。
「コロナ禍でいつも通りの開催が難しいが、途絶えさせてはいけないと続けている。戸田の学校が統合され小中一貫校になったので、来年は子どもたちと一緒に放流ができたら」とも。