伊豆半島を中心に現在、テングサ漁が最盛期を迎えている。
赤いテングサがさらされて白く乾燥したもの。寒天やところてんの原料となる
テングサは寒天やところてんの原材料として知られ、伊豆は日本でも有数の産地。特に伊豆半島で採取されるテングサは高級品として取引されることで有名だ。
テングサは採取されてから陸揚げされ、天日で干され水でさらすことで赤い色から漂白される。採取は5月下旬に始まり、7月下旬まで続く。現在はテングサ採取の最盛期で、梅雨の晴れ間を狙って乾燥され、西伊豆地区の港はテングサが多く干された「赤いじゅうたん」で埋め尽くされる。
この日は午前中雨だったが昼過ぎにやみ、仁科港では多くの漁業関係者がテングサを干す作業に集中していた。
テングサを夫婦で干していた、地元で漁師を営む鈴木貞義さん(67)は「昔は海女さんが多く在籍し、この時期はテングサでもっと赤くなって、夏の港の名物だった。現在は海女を中心に関係者が高齢化し、海洋環境の変化などもあり、漁獲高は減った」と話す。
鈴木さんは、冬の海が荒れる時期に乾燥された干されたテングサのごみを除去する作業に従事し、漁協などに卸す。「生まれたときから見慣れていて、自身も慣れた作業。西伊豆の初夏の景色が減って少しさみしい」とも。
伊豆産のところてんの製造・販売を行う栗原商店(清水町伏見)の栗原康浩社長は、伊豆のところてんについて「手摘みの丁寧な採取もあり、日本の中でも最高級クラスのところてん。一般市場だけでなく高級料亭などでも使われる」と話す。「メーカーとして、新商品の開発や啓発活動を進めていきたい」と、伊豆のところてんの良さを知ってもらうためのオンラインイベントを企画しているという。