伊豆・韮山にある江川邸(伊豆の国市韮山)で4月15日、「パンの創始者」といわれる江川英龍のパンを再現し、試食販売を行った。
同イベントは、4月12日の「パンの日」にちなんで行われたもので、同地を治めていた韮山藩代官・江川英龍が軍用にと命じ、日本で初のパンを1842年4月12日に作られたことが由縁となっている。このことから、英龍は地元では、パンの創始者「パン祖」と呼ばれている。
この日は伊豆半島を中心に製パン業を営む石渡食品(函南町)の石渡浩二さんが、500年以上の歴史のある武家屋敷の土間内で、当時の製法を再現しながら400個ほどのパンを製造。販売を行った。
石渡さんは「再現は1991年から開始したもので、当時は英龍がパンを日本で初めて作ったとして知っているのは一部の人のみだった。より多くの人に英龍の功績とパンの発祥地として知ってもらうべく、古い書籍をひもといて当時のレシピを再現することに成功した」と話す。
当時のパンは製粉技術が未熟なため、今で言う全粒粉で作られ、オーブンではなく釜戸で焼いたとされている。石渡さんは「同じ釜を使えるのは正月と今回の2度ほど。当時のパンは1カ月以上長持ちさせるため極力水分を減らし、食感もとても堅いもの。今回提供するのは、水分を増やし食べやすいものにした。時代を感じながら食べてほしい」とも。
パン祖のパンを試食した30代男性の一人は「思ったよりも柔らかく、奥に甘みを感じた。インド料理のナンに近いイメージ。今回初めてパンの発祥地が伊豆であるということを知った」と話す。
石渡さんは「30年近く活動し、知名度も上がってきた。次は、パン祖のふるさとで地元の食材を使い、自分でパンが作れる施設を造るのが夢」と話す。