稲取温泉(賀茂郡東伊豆町稲取)で6月3日、「どんつく祭」が行われた。
発祥は2000年前、稲取の素戔嗚(すさのお)神社の祭りと伝えられている同祭。伝承による祭りでは、その年に成人する男性が「お面さん」と呼ばれる赤色と青色の天狗面をかぶり、男性器を模した棒で住民を突きながら民家を巡る儀礼があり、突かれた人は夫婦和合や子孫繁栄、無病息災にご利益があるという。
男性器をかたどった「ご神木」をみこしに載せ、会場を練り歩く同祭。ご神木はサイズが複数あり、最も大きいご神木は祭どんつく50周年を記念して昨年作られた物で、長さ4.2メートル、直径80センチ、総重量2.2トンを誇る。
その珍しさから「奇祭」として話題を集め、祭りには地元住民のほか、国内外からも祭り見物に訪れる。
今年は祭り会場を町役場前から温泉街に戻し開催した。今年は日曜と晴天が重なったため、昨年より多い3000人が参加者した。
東京都から参加した20代女性は「今までまつりの存在を知っていたが、なかなか足を運べなかった。現地に訪れて体感できる魅力があり、とても楽しかった」と話す。
一方、参加者の減少やイベントの担い手減少、御神体の特徴から来るクレームや、宣伝広告などが行いづらい課題もあり、観光協会をはじめとする祭り関係者は今年で休止することを決定した。イベント関係者によると、来場者からは祭り存続を求める声が相次いでいるという。
関係者は「御神体の特徴などもあるが、問題は担い手。かつて温泉旅館に多くいたが、今はどこも人手不足。ここまで約半世紀、大きな事故もなく継続してきたが、祭りを安全に行うには不安要素が多いため休止の結論に至った」と話す。
「ただ今回は『終了』ではなく、『充電期間』として捉え、祭り行事存続を考える。さまざまな方法があると思うが、一度冷静に見直し、どのような方策があるか考えたい」とも。
稲取地区在住の30代女性は「ここ数年は多方面とのコラボ企画などもありとても楽しかったが、開催場所の移転や笑福踊りの廃止など、元気のないイメージだった。子どもや自分たちにとって非日常の風景がなくなってしまうのは寂しい。充電明けを期待したい」と話す。