NUMAZU DESIGN CENTERを運営するダイタイグラフィック・大木さんが「共創できるデザイナー」を募集
提供:daitai GRaPHiC 制作:沼津経済新聞編集部
「デザインって、『カッコいい』や『ステキ』に作るだけじゃないんですよ。問題の芯を見据えて解決し、その結果、さまざまなメッセージを世界に届けていくもの。時には顧客が気づいていないような課題を新たに問題提起して、同じ目線でその解決にあたる。なんだかわからないモヤモヤを解決したその先に、デザインが提示する素敵な未来が訪れる。見た目の仕事だけでは語れないんです」と話す大木さん。
今回紹介する大木真実さんは、グラフィックデザインを通して地域の少し先の未来を思い描く、未来志向のデザイナー。彼女は現在、地域に関わりながらデザインを通してアクションする「共創できるデザイナー」を募集している。彼女の思い描く地域の姿や、求めるデザイナー像とは?詳しく聞いてみた。
沼津の仲見世・新仲見世の商店街界隈には、いつも列をなす飲食名店や、まちの知性をつかさどる書店、老舗の洋品店、そして昭和の面影を残す喫茶店など、多種多様な店舗が軒を連ねる。午後になると下校途中の小学生や、井戸端会議の主婦などほどよい賑わいが心地よい。その商店街の流れの奥にある、自身が立ち上げたシェアオフィス「NUMAZU DESIGN CENTER(ヌマヅデザインセンター)」で大木さんは働いている。
今回スタッフを募集する、daitai GRaPHiC(ダイタイグラフィック)は、大阪府出身の大木さんが2008年に設立した個人デザイン事務所。今回、初の求人を行う。
大木さんは、大阪芸術大学を卒業後に上京しアパレル関連の資材メーカーに就職。第一線で活躍するアーティストのファッションブランドのブランディングなどに携わり、デザインの役割の大切さを知ったという。
その後、広告代理店やデザインプロダクションで広告、パッケージ、CIブランディングなど多種多様なデザイン案件を経験。外資系ブランドのクリエイティブも担当し、さらに多くのことを学んだ。
「世界的な誰もが知っているハイブランドを担当したときは、ルールやトーン、マナーが細部まで決まっていて、その中でブランドの世界観を崩すことなくいかに美しく、かつ商品の価値と情報を伝えるかといったデザイン作業。それは0.1mm単位のこだわりの世界だった。また、新しい商品を作っていくのは、多くの人の思いや戦略が詰まっている。海外の本部などあれば、勝手にレギュレーションは変更できない。いろんな人の思いが積み重なってきたものを、最後、世の中に「伝えるデザイン」に収める。とても難しいですが、デザインの醍醐味はそんなところにもあると思います」と振り返る。
大木さんは、それまでの経験を生かし、就職当初から考えにあった独立の為、2008年に「ダイタイグラフィック」を開業。大木さん個人でクライアントの期待に応えるデザインを世に生み出し続ける。大木さんは「自身が細かい部分にとらわれる真面目な性格もあり、もっと遊び心をもった適当な(だいたい)デザインで、という思いを込め「ダイタイグラフィック」という屋号にしたが、仕事に向き合っていると当然適当になんかならなかった」と苦笑いをする。
大木さんは「デザインってステキな絵を描いたり、かっこいい印刷物などを作ることで完結するものではありません。クライアントが抱えている課題に耳を傾け、一緒に伴走していく。ときには要望された課題をこなすだけでなく、クライアントが見えていなかったようなことを問題提起もする。その商品やサービスがもたらす未来を一緒になって考え、形にしていくことがデザイナーの仕事だと思うんです。言われたことをこなすだけでは、決してやりきれない仕事」と話す。
大木さんの転機は2009年。東京を中心に行ってきた仕事が、結婚を機に拠点を移すことになった。場所は静岡県沼津市。結婚・出産を経てデザイン業務を続けてきた大木さんは、東京時代から続く仕事を行いながらも次第に沼津界隈の案件も増えてきた。沼津でデザインの仕事をする中で、自身が感じた地域の課題が、デザイナー同士の繋がりがあまりなく地域のクリティブに関わる情報が入ってこない。デザイナーがそれぞれ個別で仕事をしていても、将来的に地域のクリエイティブ力は広がっていかない。
大木さんはこの課題を解決するべく、沼津市リノベーションまちづくりのサポートで商店街の2階空き店舗部分にNUMAZU DESIGN CENTERを設立。沼津のデザイナー同士がヨコに繋がりながら情報交換もできるデザイナーの拠点をつくった。現在、白が基調のシェアオフィスには大木さんをはじめ、現在3人のフリーランスデザイナーがそれぞれの仕事をしている。
大木さんはこのスペースを作った理由について「デザイナーという職業は、案外孤独な作業になりがち。もっとオープンに力を合わせて仕事ができれば、地域へのデザインの提案力はもっと上がっていくと思いました。それが、地域のクリエイティブレベルをあげることにも繋がると思い、この場所を作りました」と、地域のクリエイティブシーンのこれからを見据え、自ら実行する。
同業のデザイナーがオープンマインドで集まることで、視野が広がり切磋琢磨され、一人一人の力が磨かれる。何かを生み出し形にする力を持ったデザイナーの力が強まれば、まちはもっと面白くなる。大木さんのデザインセンターに懸ける信念はここにある。
2019年には、NUMAZU DESIGN CENTERを事務局として沼津に関わるクリエイターにより結成された「沼津未来クリエイティブ」は、クリエイターの視点から沼津の未来を考えたさまざまなプロジェクトを生み出す任意団体が発足。2020年には、クリエイティブ思考を軸に自分のオリジナリティを仕事や生き方に活かすスキルをオンラインで学ぶ「クリエイティブマインドスクール」も始まった。この拠点を作ってから、クリエイティブを切り口に多くの未来の種がまかれ、地域のクリエイターの手で育まれ続けている。
大木さんの目線はさらに先にある。今まで大木さん1人でやってきた、ダイタイグラフィックに新しいスタッフを迎え入れる決意をした。
「デザインスキルは実務経験を積んでいけば自然と身につくもの。クライアントの話をしっかり聞く姿勢を持って、その要望に向き合い、時には自分らしい切り口からアイデアを考え提案できるような、チャレンジする心を育んでいけるような人材を望んでます。センスは磨くものだと思うので、常に世の中の事にアンテナをはり、さまざまな情報に興味をもっておもしろがれるといいなと思います。そして、何より自分の暮らし方、自分のいる場所の未来を自ら描いていきたい人。仕事も遊びも垣根なくおもしろがれる人ですね!」
大木さんが求めるのは、仕事に対する誠実な姿勢とデザインの可能性を信じる人。さまざまな案件にも柔軟に取り組め一緒に成長していける素質を持ち、最後まで粘れる「押し」のある人だ。
「今のデザイン業務は、地方と東京の仕事が半々。東京でハードな仕事をしていて見えなかったことも、少し距離を置けば見える景色がある。沼津でデザインの仕事をするというのは、案外いい距離かもしれない」と笑顔で話す。
大木さんは映画好きが高じて、まちの使われていない空間を会場に映画上映をする「スキマcinema」を主宰している。空きビルや路上、時には銭湯での上映会はすでに40回を超え、コロナ禍で現在上映会は減ったものの、地域のスクリーンでは見れないマニアックで上質な映画を上映し、定期的に訪れるファンを作るほどとなった。大木さんにとってライフワークというこの上映会も、仕事と遊びの延長。シネコンしかなくなってしまった沼津の「問題解決」案のひとつでもあると感じた。
大木さんは「仕事も遊びも自分の暮らすまちのことにも、自分ごととして動いていける主体性をもった人材を求めています。沼津というまちは欲しい暮らしを自分たちで作っていける可能性に溢れているところ。デザインというツールでさまざまな問題提起と問題解決をしていきながら、自分なりの未来を思い描ける「共創できるデザイナー」を求めています」と話す。
あなたの活躍できる場は、この沼津にあるかもしれない。