「伊豆・三津シーパラダイス」(沼津市内浦長浜)が9月27日、深海生物「メンダコ」のふ化に成功した。
メンダコは、頭足綱八腕目メンダコ科に分類される、吸盤を備えた8本の腕を持つタコの仲間で、成体は大きさ20センチほど。同館飼育員の春日保さんはメンダコの特徴について、「体は寒天のようにブヨブヨとやわらかく、平べったい形をしており、腕が短い。深海生物のアイドル的存在として人気が高い」と話す。
「飼育も非常に難しく、生態研究があまり進んでいない。(人工飼育下による)卵からのふ化成功は、葛西臨海水族園(東京都)、沼津深海魚水族館(沼津市千本港町)に次ぐ国内3例目」とも。「メンダコは体が柔らかいため、トロール漁の過程でエビなどの生物に当たり死亡する。長生きしている成体も例が少ない」と春日さん。
今回のふ化は、今年2月に水揚げされたメンダコの死がいから4個の卵を採取し、暗所環境で保護していたところ、8月24日に卵殻ごしに「発眼」したため、館内にある「みとしーラボ」の冷蔵庫に移設・経過観察中に確認された。9月27日15時ごろ、最初のふ化があった個体の大きさは1センチほどで、残る3個の卵も今後のふ化が期待されている。
同館では現在、高感度カメラで撮影したメンダコの動画をモニターで公開している。動画は約1分30秒で、同館のSNSなどでも一部公開している。
春日さんは「メンダコはまだ謎が多く、飼育報告も少ない。一般公開は難しいが、メンダコの人工飼育記録を伸ばして生態解明につなげたい」と意気込む。