戸田地域の特産品であるタカアシガニの放流が5月15日、戸田港(沼津市戸田)沖で行われた。
「元気に育ってね」と声を掛けながらタカアシガニを放流する子どもたち = 沼津の戸田港沖でタカアシガニ放流 地元小中学生が27匹を海へ(関連画像10枚)
現生する節足動物の中で世界最大のカニとして知られるタカアシガニ。水深150~800メートルの深海に生息する。駿河湾は富士山からの湧水が多くの栄養分を運び込み、水温も年間を通して低温で安定していることから、質の高いタカアシガニが水揚げされる地域として知られている。
戸田では大正初期から深海トロール漁でタカアシガニが水揚げされていたが、昭和30年ごろに地元旅館経営者の梅原弥吉さんが料理として提供したことをきっかけに注目を集め、戸田を代表する名産品として広まった。
タカアシガニの放流は、資源保護と生態調査を目的に沼津市商工会が1986(昭和61)年から毎年続けている恒例行事。トロール漁の禁漁期が始まる5月中旬に行い、近年は地元の児童・生徒も参加している。
当日は、戸田漁業協同組合や沼津市、戸田観光協会などの関係者と、沼津市立戸田小中一貫学校の5~7年生11人が参加。地元漁師らから提供されたタカアシガニ27匹を放流した。放流したカニのうち半数近くは卵を抱えた雌だった。
放流前には、児童・生徒たちがカニの左側3番目の脚に白い識別タグ取り付け、カニの重量を量った。その後、戸田港の沖合約1200メートルまで船で移動し、お神酒と塩をまいた後、水深約150メートルの駿河湾に児童・生徒らの手によって一匹ずつカニを放流した。
沼津市商工会会計理事でタカアシガニ料理を提供する「丸吉」(戸田)店主の中島寿之さんは「タカアシガニの漁獲量は昭和50年ごろには年間25トンほどあったが、現在は10分の1程度まで減少している。一般的なカニの寿命は約3年だが、タカアシガニの寿命は30年ほどで、最近では100年以上生きる可能性も指摘されている。タグ調査から、移動する個体、定着する個体、駿河湾を出入りする個体など複数の行動パターンがあることが見えてきた。漁獲量減少の原因は解明されていないが、餌となる環境の変化も影響している可能性がある」と話す。
放流の2日前には、中島さんが同校の児童・生徒に向けたタカアシガニの生態などについての45分の授業も今年初めて行った。
同校6年の山本央晴さんは「戸田に住む僕たちにとってタカアシガニは大切な存在。最近はあまり取れなくなっていると聞くので、今日放流したカニがたくさん子どもを産んで、また戸田がにぎやかになってほしい。僕のおじいちゃんは3年前まで『太陽丸』という船に子どもたちを乗せてタカアシガニを放流していた。今朝、おじいちゃんは天国に旅立ってしまった。僕はおじいちゃんの船で放流することが夢だったので本当に寂しい。おじいちゃんが釣り船をやっていた頃のように、にぎやかな戸田になってほしい。日本中の人に戸田へタカアシガニを食べに来てほしい」と話す。