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沼津で干し芋製造が最盛期 祖母の味を引き継ぎ、孫が復活へ

干し芋を持つ嘉彦さん(左)と、見守る初世さん(中央)、製品を持つ平尾さん

干し芋を持つ嘉彦さん(左)と、見守る初世さん(中央)、製品を持つ平尾さん

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 沼津市愛鷹山の山麓にある「三十三(みつみ)商店」(沼津市大手町)の農場で現在、干し芋の製造がピークを迎えている。

乾燥したベニハルカ種の干し芋

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 同農場は店主の佐藤嘉彦さんの祖母・稲葉初世さんがかつて青果や茶畑として利用していた農地のうち、2400平方メートルを開墾。同地にベニハヤト・ベニハルカの2種およそ3トンのサツマイモを育て、現在最終の天日干し作業を行っている。

 同地では初世さんがかつて干し芋用のサツマイモを栽培し、近隣で販売をしていた。初世さんは現在95歳で「1948(昭和23)年に嫁いでから70年近く農業にいそしんできた。できた干し芋は近隣の住民に販売していたが、人気がありすぐに売り切れるほどだった」と話す。

 初世さんは92歳まで現役で農業を行ってきたが、高齢を理由に廃業。当時広告会社に勤務していた嘉彦さんは「仕事で農業に触れたのをきっかけに、祖母の仕事に興味が沸いた。深夜まで労働する広告業界に疑問を抱いた時に祖母の廃業を耳にした。祖母が作る干し芋の味を絶やしたくない思いと重なり、農業に挑戦したいと考えた」と振り返る。

 佐藤さんは2021年から干し芋の製作に着手。「当時は芋のことを何も知らず手探り状態だった」と話す嘉彦さんは、初世さんの指導の下、試作品作りから着手。今年はおよそ1万5000袋の出荷を目指す。

 今年から嘉彦さんと共に干し芋作りを手伝う平尾悟さんは、嘉彦さんの大学の同級生。平尾さんがミニトマト農家で働いていた時に嘉彦さんの誘いがあり、沼津に移住した。平尾さんは「最初は農家の大変さを伝え、干し芋農家になるのを止めようとしたが、彼の真剣なまなざしを見ているうちに、自身も手伝いたいと思い参加した」と振り返り、「ミニトマトと異なり土の中で育つ芋は観察ができない。ただ信じて栽培することに不安と苦労を覚えた」と笑う。

 嘉彦さんが作った干し芋は、近隣の直売所のほか、26日~28日にららぽーと沼津(東椎路)のイベントでも販売する。嘉彦さんは「祖母の作った干し芋はとても甘く、まだ程遠い。今後も品質向上に磨きをかけ、30~40代の健康に気遣う人のおやつとして定着させたい」と意気込む。

 価格は100グラム400円。

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